●エイドリアン・ニューウェイ HOW TO BUILD A CAR:日本語版
税込¥5280

1990年代以降、最も多くのF1チャンピオンタイトルを獲得しているレーシングカーデザイナーが、
初めて自らの半生と仕事について明かした著作で、日本語版は650ページを超えるボリュームとなっている。
生みの親として、ウイリアムズFW15を実際に走らせる場面から始まり、
まずはニューウェイ自身の生い立ちが語られる。学生時代からの意外な交友関係など、
のちの仕事と関連するエピソードも豊富だ。子どものころからモータースポーツに魅せられていた
ニューウェイは、レーシングカーの設計をすることに目標を絞って、サウサンプトン大学で航空工学を専攻した。
ちょうどサーキットで空気力学がクローズアップされてきた時期にあたる。
ハーヴェイ・ポスルスウェイトとの出会いから、フィッティパルディ・オートモーティヴに職を得た
ニューウェイは、まずスポーツカーとインディカーの開発、設計で頭角をあらわし、
レースエンジニアとしても経験を積む。その後、マーチでF1マシンをゼロから作りあげる立場となり、
完成したマーチ881で気鋭のデザイナーとして注目を浴びることになった。
当時はターボからNAエンジンへの移行期間で、マーチはパワーに劣るNAエンジンを使う、小さなチーム。
そんな状況で、圧倒的な強さを誇っていたマクラーレン・ホンダを抜き去るパフォーマンスを見せ、
空力の時代を切り開いたのだ。
本書では、レイトンハウス・マーチ、ウイリアムズ、マクラーレン、レッドブルで、
ニューウェイが手がけたマシンについて、設計の過程や、どうやって問題を解決していったのか、
失敗したことも隠さず、貴重な図版とともに詳しく明かされている。
F1最重要デザイナーの著書『エイドリアン・ニューウェイ HOW TO BUILD A CAR』完訳の日本版が登場
エイドリアン・ニューウェイ氏の著作『エイドリアン・ニューウェイ HOW TO BUILD A CAR』
技術的な内容だけではなく、マーチから事実上の解雇宣告を受けたこと、
なぜウイリアムズを離脱したか、マクラーレンで起きたチーム内の問題、
まだ新興勢力だったレッドブルを選んだ理由についても率直に語られる。
ニューウェイの個人史でありながら、これを読むと、近代F1の全体像が、より鮮明に浮かび上がってくるだろう。
F1・モータースポーツの第一線で仕事を続けてきた著者が、
近年のレーシングカーの技術について触れたものとして貴重な資料であり、
エンジニアの仕事について、深く知ることのできる一冊だ。それと同時に、
ひとりの人間の物語として、とても興味深く読むことができる。
レーシングカーの設計という専門的な分野を扱いながら、非常に読みやすく、
ニューウェイ自身のキャラクターが反映された親しみやすい文体で綴られている。ぜひ手に取ってほしい一冊だ。
『エイドリアン・ニューウェイ HOW TO BUILD A CAR』
訳/水書健司 監修/世良耕太
ハードカバー・656ページ
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